2019年の「国民の健康・栄養調査」では、BMI18.5未満の痩せている20代女性で20.7%、30代女性で16.4%と報告されています。若年女性の栄養状態を鑑みると、普段からバランスの良い食事を心がけていることがいかに難しいことかがわかります。
妊娠中、思っていた以上に「ちゃんと食べる」ことって大事なことなんです。
目安としては──普段の食事に
- 妊娠初期:+50kcal
- 妊娠中期:+250kcal
- 妊娠後期:+450kcal
が必要になってきます。
後期になると、おにぎり1個+お味噌汁くらいの追加が必要ってことになりますね。
だからと言って、カロリーだけをアップしたらいいかというと、そういうわけではありません。必要な栄養素をバランスよく取り入れることが大切です。
妊婦さんの「痩せすぎ」に注意!
最近では、体重増加を気にしすぎてしまう妊婦さんも少なくありません。でも、妊娠中の痩せすぎや、重度の鉄欠乏性貧血は、早産や低出生体重児のリスクを高めてしまいます。
さらに──
低出生体重児で生まれた子どもは、
将来的に肥満・糖尿病・循環器疾患などのリスクが高くなるというデータも。
痩せたままでいたい、という気持ちはわかりますが、だからと言って子どもの不健康を願っている人は一人もいないと思います。
そして痩せすぎたママ自身も、
閉経後に骨粗鬆症や骨折のリスクが高まりやすく、特に高齢者の骨折は認知症の引き金や死亡率の上昇にまでつながる可能性があるんです。
ここまで聞いて、妊娠中の今、そのスタイルを維持する必要が果たしてあるでしょうか?
病院で働く薬剤師の私ですが、骨折した方や認知症の方をたくさん見てきました。正直、見ていて苦しいなって思う時が何度もありました。
同じ老後でも、動くことができる、家族と意思疎通ができる、食べることができる方が良くありませんか?
もう一度考えてみてください。自分のため、そして子どものためにも。
食事だけでは難しいときは、サプリも味方に
理想はバランスのよい食事。でも、つわりがひどかったり、そもそも食が細かったり…毎日完璧に食事で補うのは、簡単じゃありませんよね。
そんなときには、サプリメントをうまく活用するのもひとつの選択肢です。
この記事ではビタミンAと葉酸について取り上げていきます。
ビタミンAのポイント、ちゃんと知ってる?
ビタミンAには、目や皮膚、粘膜を健康に保つ働きがあり、免疫力の維持にも大切な栄養素。でもひとつ注意点があります。
ビタミンAは脂溶性ビタミンのため、摂りすぎると体に蓄積されてしまうんです。
特に妊娠初期〜28週未満の妊婦さんが過剰摂取すると、
胎児の形態異常のリスクが高まる(レバーや魚卵の食べすぎには要注意!)
でもご安心を。植物由来のβカロテンから摂るビタミンAなら、体が不足しているときだけ変換されるので、多少多めに摂っても問題ありません。
葉酸って、なんでそんなに大事なの?
妊娠を考え始めた頃から、よく耳にする「葉酸」。
でも実際、どうしてそんなに必要なの?と思った方もいるのではないでしょうか。
私自身もそうでした。妊娠が分かってから慌てて葉酸のサプリを買いに行った記憶があります。
でも本当は、それではちょっと遅いんです。
葉酸は「命の土台」を支える栄養素
葉酸は、細胞分裂やDNA・タンパク質の合成に欠かせない栄養素です。つまり、赤ちゃんが“人”として育っていくすべての過程に、深く関わっています。
特に重要なのが、妊娠ごく初期。この時期に葉酸が不足していると、
胎児の脊椎がうまく形成されず、「神経管閉鎖不全」という重い先天異常のリスクが高まる
中枢神経が作られるのは、妊娠6週ごろ。
でも妊娠が分かるのって、多くの場合5週~6週くらいなんですよね。
つまり、「妊娠したかも?」と思ってから摂るのでは遅いことも。
だからこそ、妊娠の1か月以上前から葉酸を摂ることが推奨されているんです。
妊娠初期だけじゃない!葉酸が守るその後のリスク
最近では、葉酸が妊娠期間を通じて役立つことも分かってきています。
胎盤の形成がうまくいかないと、
子宮内胎児発育不全や常位胎盤早期剥離、後期死産などのリスクが高まると言われています。
葉酸には、そうした合併症のリスクを下げる可能性があるとされているんです。
葉酸は緑黄色野菜やレバーに多く含まれていますが、実は熱や水に弱い性質があるため、調理の過程で失われやすいんです。
そのため、食事+サプリメントでの補給がすすめられています。
妊娠を希望する女性には1日400μgのサプリメントでの摂取を推奨しています。
ただし、取りすぎにも注意が必要。1日の上限は1000μgです。大量に摂取(1~10mg)してしまうと、発熱・蕁麻疹・かゆみ・呼吸障害などの葉酸過敏症を起こす場合があります。また、ビタミンB12欠乏症の診断を難しくしたり、小腸からの亜鉛の吸収を抑える可能性があるため、このような上限量が決まっています。
といっても、サプリメントの1日に飲む錠数をきちんと守れば、この上限量を超えることはないので安心してください。
さいごに
妊娠中だからこそ、しっかり食べて、自分の体も赤ちゃんの未来も守っていきましょう。